イノベーションのロスタイム

新規事業創出に関わる30代中盤・元外資コンサルが、仕事とそれにからめた遊びの話をします。

経験不足に悩むコンサル初心者(私)に、先輩は「聞けばいーじゃん」と言った

「コンサルならわかるでしょ」「知ってるでしょ」
というのは、コンサルタントに従事する人間ならだれもが聞く言葉かもしれない。
 
実際のところ、森羅万象に答が出せるコンサルタントは(おそらくは)存在しないし、
そもそもコンサルタントの付加価値は知識や経を単純に切り売りするところにはない。
最低限のインプットで顧客と「一緒に考える」、そのうえで顧客の期待を超えることが全てなのだ。
 
「プロジェクトで扱ったことのある業界のことなら知っているでしょ」というのも、正確ではない。
 
コンサルタントは確かに、短期間で大量のインプットを行う。
そのプロジェクトに関連する産業のことなら、最初の2日目くらいまでに頭にざっと入れてしまうからだ。
 
でもそれは当たり前だけど、自分が担当したプロジェクトの、自分が担当した部分でしかない。
 
たとえば自動車業界をやってましたと言っても、
その人が調達部門のモジュールを担当したのか、
技術職の人事制度を担当したのか、
M&Aのために周辺業界を調べまくったのかでまったく業務内容は異なる。
極端な話、自動車チーム同士でもスキルマップを描けば驚くほど分散するのだ。
 
それくらい、コンサルの知識や経験は偏っている。
 
以前は、このように知識や経験がまだらであることが許せなかった時期がある。
ある業界の知識がすっぽりないことで、ホワイトボードの前で立ち尽くしたり。
お客さんから(この人、こんな技術トレンドも知らないで本当に『コンサル』なのか・・・?)という顔をされたり。
そういう状況から何とか脱したいと思っていた。
 
全てを知り、すべてに答えが出せるコンサルなどこの世に存在しようがないことはもちろん知っていた。
だがそこに迫っていくことがコンサルなのだという(半ば中二病的にヒロイックな)決意を抱いていた。
 
その悩みを吹き飛ばしたのが、ある先輩の一言だった。
 
ある日、私は先輩に悩みのような、独り言のような一言をぶつけた。
「いくら経験を積んでも、コンサルなのに知らないことやわからないことばっかりなんですよ」
 
そんなの当然だよ、ゆっくり経験積めばいいよみたいな答えをなんとなく想像していると
先輩は何言ってんだこいつ、みたいな顔で私を見た。
 
「知らなきゃ聞けばいーじゃん」
彼はそう答えた。私は虚を突かれた。
「お客さんの前だろうが、後輩の前だろうが、知らないことあれば目の前の人に聞けばいーじゃん」
彼は、何がそんなに悩みなの?みたいな不思議そうな顔をしている。
 
知らないことは聞けばいい…そりゃあ、まあたしかにそうです。
私は虚を突かれた格好で立ちすくんだ。
あげく、なんとも恥ずかしい返しをしてしまった。
「そうなんですが、知らないこと聞いてばっかりだとあまりにバカっぽいというか。。。」
 
先輩の顔からどんどん表情が消えていく。
「だって俺らには、聞き出す技術があるじゃん」
 
「単なるバカ質問じゃなくてさ、
仮説ぶつけて聞き出すヒアリングをいっつもしてるじゃん」
「その中で知らない単語やら出来てもみんな堂々としてるよね」
 
「仮説を検証する質問をしまくるのは仕事なわけだし、
そのついでに基本的なことを聞こうが、それがバカっぽいはずもないじゃん」
「だから遠慮なく聞けばいーじゃん、って言ってんの」
 
あー、としか言えず立ちすくむ私に先輩は畳みかけました。
 
「つーかバカに見えるとか気にする時点でおかしいよね。
業界数十年の人からすれば、俺らの知見やら初期仮説なんて頓珍漢でバカっぽいだと思うよ
でもそれが売りなわけじゃん」
「いろんな業界で仮説作りまくって、検証しまくった俺らが質問ぶつけまくることも価値だよ」
「バカと思われようが、プロジェクト期間中に価値がでりゃいんだよ。
「お前のバカに思われたくないなんて自意識なんか一円にもならないだよ」
悩みですらねーよそんなの」
「『バカに思われたくない』なんて言葉が出てくる時点で、
もうクライアントファーストじゃないんだよ。
そんなこと考えてるひまあったら、一個でも多くQAリスト作ってお客さんと立ち話でもして来いよ」
 
…ほかにもいろいろ言われた気もするけど、今覚えているのはこれくらいです。
何というか、すべてが正論で、自分が何にも気づけていなかったことを痛感。
 
中途で入るコンサルほど、自分の経験を活かさなければ…と苦闘してしまいます。
いまある経験や知識を活用することはもちろん大事です。
ただ、ありものの知識にこだわっても価値につながるとは限りません。
(中途がプロパーコンサルから「unlearn(学びを忘却)しろ」と言われるのと同じです)
 
目の前のお客さんから課題を引き出し、ともに考察する姿勢とテクニックがコンサルの売り物でもあります。
そんな基本的なことを、先輩の「聞けばいーじゃん」(あきれ顔)というセリフが実感させてくれました。
 
という、中途コンサル1年目の思い出でした。
書いてると恥ずかしくもありますが、先輩の言葉を野に放つためにも書いてよかったかな、という気もします。
 
※コンサルタントの聞く技術については別途書きたいですが、
まずはBCG内田さんの「仮説思考」が入門の入門としてよいと思います。

 

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

 

 入門といっても簡単という意味ではありません。

入り口としての敷居が低く、かつ仮説思考の有用さと実戦で使うことの難しさまでも触れているコンパクトな名著だと思います。