イノベーションのロスタイム

ファーム勤務のコンサル から、アラフォーの独立コンサルになりました。

コンサルが速読できるシンプルな理由

コンサルやる前から、速読術には結構お金と時間を使ってきたんですよ。

ただ、コンサルという仕事をしたら、「速読術のカラクリ」みたいなものがわかってきたので解説します。

 

「コンサルはなぜ速読できるのか」答えは単純で、先に言っとくと「速読の正体は仮説検証であり、コンサルはそれに慣れてるから」です。

 

速読本が共通して言ってること

これまであらゆる速読本を読み漁り、フォトリーディングのセミナーにも参加しました。

 

[新版]あなたもいままでの10倍速く本が読める

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  • 作者: ポール R.シーリィ,神田昌典,井上久美
  • 出版社/メーカー: フォレスト出版
  • 発売日: 2009/11/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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↑速読本の原点であり、よくも悪くもこれ一冊でいい速読術へのアプローチ紹介本です。

 この本のヒットの前後にも速読本はあったし、これからも形を変えてあれこれ出てくるでしょう。

でも基本、速読本が言ってることはおよそ以下のようなことです。

 

  • 全部読むな、読みたい箇所だけ読め
  • 読みたい箇所とは、事前に知りたいことや興味を持っていることについて書いてある箇所のことだ
  • 一度で読みきるな。何度も読め(接触頻度を増せ)
  • 内容は無理に記憶しなくていい。気になった箇所と全体の構成だけなんとなく印象が残ればよい

 

…これって要するに、「仮説検証をその本でやれ」と言ってるだけですよね。

速読の正体は「仮説の有無」

つまり速読とは、事前に立てた予想や仮説について、高速に検証、確認している読書の一スタイルにすぎません。

  • 「日頃からこんな疑問があって、こういう答えなんじゃないかと思ってるんだけど、このタイトルの本なら何かヒントが書いてそうだな」
  • 「目次見ると、第3章に書いてそうだな」
  • (該当箇所読んだあと)だいたい考えてた通りだったなーでも理由付けが思ってたんと違うな。一応前後の章も軽く目を通すかー
  • (前後の章を少し確認後)なるほどね、そういうこと背景がこの問題にはあったのね。うん、読んで良かった!(読書終わり)

これはやや単純化しすぎですが、いわゆる速読というのは上記なような姿をしてます。すなわち、「こんなことが書いてるんだろうなー」という仮説思考です。

これとは逆に「なんか知らんけど面白そうやなー」くらいの姿勢で読書に望んでも、事前仮説がなくてベターっと頭からだらだら読むから時間がかかるんですね。

仮説を持たずに臨む読書や人との会話は、どんなに瞬間的に楽しくても何も自分に残らない・・・つるっとしてるんですね。新しい知識や考え方が滑っていくイメージ。

 

でも、浅いものでも仮説を準備しとくと、それが当たっても外れても本の内容が印象に残ります。

たとえ浅い仮説(自分なりの根拠づけもあやふやな仮説)であっても、「きっとこうではないか?」という頭で臨む読書はなんらかの知識や新たなる仮説を引き付けます。なので僕は「仮説思考とは頭が粘着質になっている状態」とたとえています。トリモチみたいに、動き回るたびにいろいろぺたぺたくっついてくる状態ですね。

 

だから仮説ドリブンの読書=速読って、すごく時間の費用対効果がいいと思います。

多くの速読本が手を変え品を変えて仮説思考を持てと言ってるのはそういう理由があるからと思います。

上記のフォトリーディングの本も「問いを持ってぱらぱら流し読みせよ」という章があるのですが、同じことを言ってるなと思うようになりました。

そういう意味で速読本はいわゆる「モテ本」と同じ構造かもしれません。同じ事(聞き上手になれ!とか)をいろいろ変奏してるだけという意味で。

とりあえず、速読のトリックは単なる仮説検証だよという話でした。

 

仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法

仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法

 

↑仮説思考って何?という人にとって最強の入門本です。内田本はコンサル本のなかでも中道というか、汎用性が高いものが多い気がします。

 

以下は余談です。

 

あくまでも、数ある読書方法のひとつであることには注意

最後に補足ですけどね…ここまで速読語っておいてなんですけど、こんなの本当にただのテクニックなんです。必要なときに必要な部分だけをつまみ読みして、それを速読と言い張っているだけです。皆さんも雑誌やらまとめサイトをざざっと眺めてるとき、同じ事を無意識にしてると思います。

 

読書には、何十年をかけて古典を味わう読み方もあれば、コンサルや立花隆みたいに短期間で関連本を広く浅く読んで仮説を作ったり修正したりする読み方もあります。

 

読書脳 ぼくの深読み300冊の記録 (文春e-book)

読書脳 ぼくの深読み300冊の記録 (文春e-book)

 

 どれが正解というものはありません。

例えば私は西脇順三郎の詩が凄く好きなんですが、もう何十年も同じ詩集を、活字の一文字一文字を愛でるように読み返してます。そこには効率性も仮説もありません。活字に浸る時間があるだけです。 

西脇順三郎詩集 (岩波文庫 緑130-1)

西脇順三郎詩集 (岩波文庫 緑130-1)

 

 また、仮説ベースで読むといったって、そもそも初めて読む分野の書籍などは、「検証すべき論点そのものを知る段階」だったりします。そんな時は自分のなかに妙な予断を持たずに読んだほうがいい時もある。

 

いろんな読み方があっていいと思います。一ページ読んで本棚に戻そうが、一生かけてなめるように全文を読もうが自由なんです。

 

一番良くないのは、学校の国語教育の弊害かもしれないのですが「本は頭から最後まで読んで、内容をそれなりに頭にいれておくべき」という一種類の読み方にとらわれていることです。

速読は本への冒涜と思っている人もいます。

 

「こうしなければならない」と思っているときに、人の脳は萎縮していいパフォーマンスが出せなくなると思っています。

今回はそんな人むけに、いろんな読み方があるよ、速読だろうと遅読だろうと、目的に合わせて好きに選べばいいよ、そして速読は大したものではなくて単なる仮説検証だよーということが言いたくてつい気持ちが入ってしまいました。

 

という訳で、なんかおもいっきり話が脱線した気がしますが、また後日。