イノベーションのロスタイム

新規事業創出に関わる30代中盤・元外資コンサルが、仕事とそれにからめた遊びの話をします。

映画「アメリカン・スナイパー」感想~究極の会社員映画

 

最初に感想を言うと、会社員であることの幸福と悲劇が余すことなく描かれていました。

いま会社に身を置いている人もそうですが、これから会社を選び、しばらくの人生をそこで過ごそうと考えている学生の方々にもおすすめです。

「アメリカン・スナイパー」のあらすじ

アメリカの片田舎で荒くれものをしていた若者が、911をきっかけに海兵隊に入隊する。
彼はそこで、スナイパーとしての才能を開花させる。

スナイパーの仕事は、最前線で自国民を敵から守るものであり、それは彼が幼少から父に叩き込まれたカウボーイの思想にもかなっていた。それは「女子どもを狼から守れ」という言葉だ。
しかし彼がその才能を発揮すればするほど、国民の英雄になればなるほど、彼はその矛盾に悩まされることになる。
なぜなら、自国民のカウボーイであろうとスナイパーの仕事をすることは、前線でゲリラ的に襲いかかる「敵国の女子ども」を標的にすることを意味し、自分こそが恐ろしい狼になってしまうからだ。
そんな中、敵国の最強スナイパーとの対決が迫ってくる・・・

 

組織に最適化することの幸福と悲劇

主人公にはスナイパーの才能があった。しかしその射撃の才能は、民間の会社やフリーランスでは活かされないし、名誉も得られないでしょう。
彼の「遠くにいる人の頭をピンポイントで撃ち抜ける」という才能は、アメリカ軍という巨大な看板や資源や権限のもとでこそ存在を許され、フルに活かされる。

そして賞賛と報酬を得ることができる。

もし彼が米軍を辞めたら、彼はただのナンパとケンカが好きなニートになってしまう。彼はそれを痛感しているから、組織を離れるという決断がなかなか下せない。これは彼にとって悲劇といえます。

つまり彼は、大組織の中に身を置いてこそ才能を発揮する喜びと、多くの人からの承認を得られる仕組みの中にいるが、そこにロックインされている
彼がライフルの腕をあげ、海軍というコミュニティに自らを最適化すればするほど、彼はその仕組みから離れられなくなっていく。

そこには彼にしか味わえない幸福と、彼ゆえに抜けられない不自由の構造がある。


彼の幸福はそんな形をしている。

幸福のかたちと所属組織

もちろんその逆の人もいるでしょうね。
たった一人で絵を完成させる芸術家たち。
誰の意見も聞かず、己の野心と美学でプロダクトを書き上げる面々。
彼らの幸福は、一人で真っ白な対象と向き合うことでこそ浮かび上がる。
組織などというハコを必要としないし、むしろ組織によってスポイルされてしまうような、そんな運命の下に生まれたような人たちもいる。

どちらがいいとか悪いという話ではありません。

それぞれの幸福のかたちを追い求めていく過程で、組織という手段を必要とするのか、それを活用できるのか、といった分かれ目があるにすぎないからです。

 

だから、たまに発生するフリーランスと会社員のどちらがいいか論争も、この観点からすれば本当に不毛だとわかります。
勝利条件の違うもの同士が、どちらが幸せだのQOLが高いだの社畜で不幸だの言い張っても、比較もできないし比較から得る示唆もないからです。

そんなことより、自分にとって幸福がどんな形をしているのかを考える方がよっぽど大事です。
映画ラストの対決でも、その点は強調されます。

ライフルのスコープ越しに見える、その人だけの目標

終盤、最強のライバル、シリア人のムスタファとの戦闘。
周囲の誰もがムスタファなんかいないと言い張るなか、主人公はスコープ内のぼんやりした揺らぎを見つめながら「いる」と言い張ります。そしてその判断にすべてをかけて勝負に挑むのです。

我々には見えていない景色と標的が、彼には見えていた。蜃気楼でしかない色の歪みも、彼が見れば「誰の反対を押し切ってでも、狙い撃つべき標的」であった。

・・・ここから何を感じたか。

戦っていない人間が、戦っている人の見える景色を論評することは無意味だということです。
外野である我々からは何も見えなかったとしても、戦闘態勢をとっているその人のスコープには、その人が狙うべき標的が見えているかもしれないからです。

 

我々は他人の幸福を評価できないし、すべきではない、とも言えます。
そんなことより、自分のライフルをしっかり構えた方がいい。自分がそもそも何を狙っているか考えたほうが生産的でしょう。

 

会社員と就活生におすすめ

以上のように、この映画は「個人にとって幸福とは何か」「個人と組織のあるべき関係とは」という、普遍的な問いをぶつけてきます。
当然、イーストウッドも安易にどれがいいという描き方はしません。
それゆえ、見た我々がいまの身を振り返って自由に想像できる余地があります。

そんな器の広い映画でした。

 

 

仕事の合間に、就活の合間の映画におすすめです。

それではまた・・・

kensho

※仕事映画といえば、こちらもおすすめです。「ナイトクローラー」の主人公は、ある意味で自分の幸福感にまったく疑いのない(それゆえにサイコパスな)人物です。

そんな彼の怒涛の活躍を目撃してみてください。

 

innovation-losstime.hatenablog.com

 

新規事業をざっと把握できるおススメ本(新規事業担当者向け)

新規事業の検討が増えている

新規事業の検討をお手伝いすることが、ここ数年で飛躍的に増えてきました。
ベンチャー企業が増加していてそのお手伝いを、というよりは
いわゆるレガシー企業が「新たに何かやらなくては!」と検討を開始されるケースです。
規模は大企業から零細まで、場所も東京から地方の郡部までと本当に様々です。
 
背景にあるのは、既存事業(コア事業)の伸び悩みであったり、
既存事業そのものは現状順調であるが10年後の外部環境を見据えると不安…という場合のいずれかに分類されます。
(本当は、伸び悩む前にご相談いただきたいこともあるのですが、まあそこはご縁ですから・・・)
 

「新規事業がざっとわかる本」を求める若手の方

で、プロジェクトとなると経営企画部かそれに準ずる部署の部長クラスと若手(入社3~5年目くらい)、というチームが配置されます。
そして若手の方が事務局とか社内調整をご担当されるわけですね。
経営企画部で新規事業プロジェクトにも声がかかっているわけですから、当然優秀なわけです。ディスカッションのまとめも見事ですし、どこまでを社内で進め、どこまでを我々外部に任せるかの線引きもきちんと判断されます。
※昨今新人の質が下がっているなど言われがちですが、若い層の「上澄み」のレベルは年々飛躍的に上がっているというのが正直なところです。。。このあたりの現象は改めて別の機会にまとめたいですね。
 
 さてそんな優秀な若手層の方から「新規事業の進め方をざっくり学べるような本とかサイトありますか?」という質問をよく頂くことがあります。(本当、勉強熱心)
 
そこで「自分(kensho)が読んで良書と思って薦めて、かつ先方からも『良かったです』とフィードバックがあった書籍」を以下で紹介します。
 

新規事業をざっと把握できる3冊

■新規事業・成功の<教科書>

 

新規事業・成功の<教科書>―200社以上に命を吹き込んだプロ中のプロが教える

新規事業・成功の<教科書>―200社以上に命を吹き込んだプロ中のプロが教える

 

 【この本の良い点】企業内で新規事業を考える際の懸念点が網羅されている

→とくに組織設計に関する考え方は非常に丁寧です。

新規事業専門部署の設立から、そのPLの位置けまできちんと解説されています。

「新規事業のために立ち上げた部署が、トップに守られず反対派によってスポイルされてしまう」といった(悲しい)あるあるにも触れつつ、ではどうしたら良いのかが実感を持って書かれています。

→新規事業のプロジェクトにいきなり任命された若手の方も、これを読んで「心が楽になった」と言っていました。おそらく、著者の方の見守るような人柄がうっすら伝わるからではないでしょうか(もちろん、心が楽になるだけでなくて実際にためにもなりますよ!)

 

■オープンイノベーションの教科書(やや大企業の方向け)

 

オープン・イノベーションの教科書

オープン・イノベーションの教科書

 

【この本の良い点】明解なプロセス解説

ややバズワード化しつつあるオープンイノベーション。

そこそこのサイズの企業になってくると「うちもオープンイノベーションを検討せよ」という超ふわっとした指示が降りてくることがあります。(その是非はここでは問いません…)

じゃあオープンイノベーションとやらを検討することになった若手は途方に暮れるわけですね。「検討ったって、いったい何をどうすればいいんだ…」と。

この書籍は、「オープンイノベーションはどのようなプロセスで進めるべきか、なぜその順序で進めるべきか、何に気を付けて進めるべきか」がきちんと整理されています。

具体的には

①「社外に求める技術選定」(技術ニーズの棚卸と優先順位付与→求めることの明確化)

⇒②技術探索⇒③技術評価⇒④技術の取り込み(第3社の活用や戦略の落とし込みまで)

という感じです。
特に③の技術評価の記述とか細かくて面白いですよ。
「評価が難しい場合は相手の力量を試す質問をすべし」とかあって、その際のキークエスチョンの例までかかれています笑
自社の上層部が「オープンイノベーション云々」言い出していたら、この本を熟読しておくと若手でも場を支配できると思いますよ!
 
■ビジネスモデル・ジェネレーション(内容というか、フレームワークを使います)
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

  • 作者: アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2013/10/03
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る
 

【この本の良い点】使い勝手最強レベルのフレームワーク

定番ですね。

これに出てくる「ビジネスモデル・キャンバス」は何だかんだよく出来たフレームワークだと思います。新規事業の需要な要素を網羅しているという意味で。

穴埋めだけでビジネスモデルがいったん出来上がるという簡便さも魅力です。(しかし、その穴埋めこそ一番頭に汗をかくところだったりします)

新規事業でワークショップやりましょうとなったら、結構このフレームワークを使います。

そしてそのA41枚を埋めていただく際に、日ごろ物を考える癖のある無しがだだ漏れになってしまう残酷なツールでもあります笑

適当に参加している部長さんよりも、真剣に事業に取り組んでいる若手のほうが、詳細かつ具体的な(そして経営側に腹落ちしやすい)キャンバスを書いたりします。

ワークショップだけに参加して、ものすごいポテンシャルを発揮した若手が、いきなりプロジェクトに組み込まれたこともあります。

それくらい、事業の良しあしの判定にも使えますし、使う人の力量がはっきりするツールですね。

(書籍は買わなくても、「ビジネスモデル・キャンバス」で検索すれば解説サイトがたくさんあるのでそれを見ればいいと思います)

 

さてとりあえず三冊紹介しましたが、どちらかというと企業内新規事業(Corporate Venturing)のご担当者向けな感じですね。

これ以外にもいろいろありますので折をみて紹介します。

とはいえ、新規事業なんて手を動かしてナンボの世界。あまり予習しすぎてもいけないのでこの3冊ぱらっと読むくらいでいいと思います。

 

それではまた・・・

kensho

 ↓こちらもおすすめ。

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コンサルが速読できるシンプルな理由

コンサルやる前から、速読術には結構お金と時間を使ってきたんですよ。

ただ、コンサルという仕事をしたら、「速読術のカラクリ」みたいなものがわかってきたので解説します。

 

「コンサルはなぜ速読できるのか」答えは単純で、先に言っとくと「速読の正体は仮説検証であり、コンサルはそれに慣れてるから」です。

 

速読本が共通して言ってること

これまであらゆる速読本を読み漁り、フォトリーディングのセミナーにも参加しました。

 

[新版]あなたもいままでの10倍速く本が読める

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  • 作者: ポール R.シーリィ,神田昌典,井上久美
  • 出版社/メーカー: フォレスト出版
  • 発売日: 2009/11/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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↑速読本の原点であり、よくも悪くもこれ一冊でいい速読術へのアプローチ紹介本です。

 この本のヒットの前後にも速読本はあったし、これからも形を変えてあれこれ出てくるでしょう。

でも基本、速読本が言ってることはおよそ以下のようなことです。

 

  • 全部読むな、読みたい箇所だけ読め
  • 読みたい箇所とは、事前に知りたいことや興味を持っていることについて書いてある箇所のことだ
  • 一度で読みきるな。何度も読め(接触頻度を増せ)
  • 内容は無理に記憶しなくていい。気になった箇所と全体の構成だけなんとなく印象が残ればよい

 

…これって要するに、「仮説検証をその本でやれ」と言ってるだけですよね。

速読の正体は「仮説の有無」

つまり速読とは、事前に立てた予想や仮説について、高速に検証、確認している読書の一スタイルにすぎません。

  • 「日頃からこんな疑問があって、こういう答えなんじゃないかと思ってるんだけど、このタイトルの本なら何かヒントが書いてそうだな」
  • 「目次見ると、第3章に書いてそうだな」
  • (該当箇所読んだあと)だいたい考えてた通りだったなーでも理由付けが思ってたんと違うな。一応前後の章も軽く目を通すかー
  • (前後の章を少し確認後)なるほどね、そういうこと背景がこの問題にはあったのね。うん、読んで良かった!(読書終わり)

これはやや単純化しすぎですが、いわゆる速読というのは上記なような姿をしてます。すなわち、「こんなことが書いてるんだろうなー」という仮説思考です。

これとは逆に「なんか知らんけど面白そうやなー」くらいの姿勢で読書に望んでも、事前仮説がなくてベターっと頭からだらだら読むから時間がかかるんですね。

仮説を持たずに臨む読書や人との会話は、どんなに瞬間的に楽しくても何も自分に残らない・・・つるっとしてるんですね。新しい知識や考え方が滑っていくイメージ。

 

でも、浅いものでも仮説を準備しとくと、それが当たっても外れても本の内容が印象に残ります。

たとえ浅い仮説(自分なりの根拠づけもあやふやな仮説)であっても、「きっとこうではないか?」という頭で臨む読書はなんらかの知識や新たなる仮説を引き付けます。なので僕は「仮説思考とは頭が粘着質になっている状態」とたとえています。トリモチみたいに、動き回るたびにいろいろぺたぺたくっついてくる状態ですね。

 

だから仮説ドリブンの読書=速読って、すごく時間の費用対効果がいいと思います。

多くの速読本が手を変え品を変えて仮説思考を持てと言ってるのはそういう理由があるからと思います。

上記のフォトリーディングの本も「問いを持ってぱらぱら流し読みせよ」という章があるのですが、同じことを言ってるなと思うようになりました。

そういう意味で速読本はいわゆる「モテ本」と同じ構造かもしれません。同じ事(聞き上手になれ!とか)をいろいろ変奏してるだけという意味で。

とりあえず、速読のトリックは単なる仮説検証だよという話でした。

 

仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法

仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法

 

↑仮説思考って何?という人にとって最強の入門本です。内田本はコンサル本のなかでも中道というか、汎用性が高いものが多い気がします。

 

以下は余談です。

 

あくまでも、数ある読書方法のひとつであることには注意

最後に補足ですけどね…ここまで速読語っておいてなんですけど、こんなの本当にただのテクニックなんです。必要なときに必要な部分だけをつまみ読みして、それを速読と言い張っているだけです。皆さんも雑誌やらまとめサイトをざざっと眺めてるとき、同じ事を無意識にしてると思います。

 

読書には、何十年をかけて古典を味わう読み方もあれば、コンサルや立花隆みたいに短期間で関連本を広く浅く読んで仮説を作ったり修正したりする読み方もあります。

 

読書脳 ぼくの深読み300冊の記録 (文春e-book)

読書脳 ぼくの深読み300冊の記録 (文春e-book)

 

 どれが正解というものはありません。

例えば私は西脇順三郎の詩が凄く好きなんですが、もう何十年も同じ詩集を、活字の一文字一文字を愛でるように読み返してます。そこには効率性も仮説もありません。活字に浸る時間があるだけです。 

西脇順三郎詩集 (岩波文庫 緑130-1)

西脇順三郎詩集 (岩波文庫 緑130-1)

 

 また、仮説ベースで読むといったって、そもそも初めて読む分野の書籍などは、「検証すべき論点そのものを知る段階」だったりします。そんな時は自分のなかに妙な予断を持たずに読んだほうがいい時もある。

 

いろんな読み方があっていいと思います。一ページ読んで本棚に戻そうが、一生かけてなめるように全文を読もうが自由なんです。

 

一番良くないのは、学校の国語教育の弊害かもしれないのですが「本は頭から最後まで読んで、内容をそれなりに頭にいれておくべき」という一種類の読み方にとらわれていることです。

速読は本への冒涜と思っている人もいます。

 

「こうしなければならない」と思っているときに、人の脳は萎縮していいパフォーマンスが出せなくなると思っています。

今回はそんな人むけに、いろんな読み方があるよ、速読だろうと遅読だろうと、目的に合わせて好きに選べばいいよ、そして速読は大したものではなくて単なる仮説検証だよーということが言いたくてつい気持ちが入ってしまいました。

 

という訳で、なんかおもいっきり話が脱線した気がしますが、また後日。

カズレーザーの強い知的好奇心が見えた数秒

この間ロンハーで「カズレーザーがいい人」であることを検証するドッキリが行われていました。
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企画の意図通り、「タクシー運転手に何を聞かれてもフレンドリーに答える」とか「飲み会で一般人から一緒に飲もうと誘われても断らない」とか「交流のない先輩から借金を持ちかけられても快諾する」など、いい人というか、彼の素直さが浮かび上がるものでした。

ただ、私が反応したのはもっと別の場所でした。「この人(カズレーザー)って、本当に知的好奇心が強いんだな」と思わされた会話がありました。

 カズレーザーの些細な一言

会話の状況はこうです。

・飲み会のさなかに、知らない会社員グループ(仕掛人)から一緒に飲もうと誘われる。

・それを快諾するカズレーザー、同じ席に座りながら上司らしき人と会話を始める

 

カズ「皆さんの会社はどんなお仕事されてるんですか?」

上司「医療機器を海外から輸入してるんですよ」

 

…ここまではまあ、普通の会話ですよね。

普通なら、ここで「そうなんですねー」で終わってもいいわけです。

 

しかしカズレーザーは続けます。

 

カズ「医療機器ってどんなものですか?」

上司「…有名なものだとMRIとか、レントゲンとかですね」

カズ「そういうのって、海外から輸入するものなんですねー」

上司「ほとんどは輸入ですよ」

カズ「そうなんですね!

 

…一つ目の、医療機器どんなものか詳しく聞くのはまだわかります。

二つ目は「販路に関する感想」です。

この感想がパッと出たのを見て、ああ、この人は本当に知的好奇心が強い、知識欲の旺盛な人なんだなと思いました。

おそらく彼のなかの常識では「医療機器のような精密機械は日本製が強い」というざっくりしたものだったのでしょうけど、上司の人が言ったことが少し異なるから、それが意外だったと感想をぶつけているんですね。

大抵の場合、医療関係者でもなければ医療機器が国産だろうが海外産だろうがどっちでもいい、関心がないと思いませんか?

だけどカズレーザーはそれを「へーそうなんだー」で終わらせずに、反射的に掘り下げているんですね。

 

 小さな違和感を、見逃さない好奇心

これは、普段から読書をしたり、いろいろなものに興味を持っている人の特徴だと思います。

何かを新しく知ったときに「あ、不思議だな」「あれ、何かヘンだな」と感じる。

その小さな違和感を逃さずに、すぐに確認したくなる

それを熱いうちに=関心があるうちに確認することで、新たな発見や知らないモノの見方が手に入ることを経験的に知っているからですね。

そういえば某コンサルのパートナーは、何かある度にマメに辞書を引いてましたけど、カズレーザーの即レスはあの感じに近いです。

 

カズレーザーのセリフ自体はごく普通の会話の流れに見えますし、相手に話を合わせる気遣いの質問ともとれます。

ですが、会話を合わせるだけならこの上司の趣味やら好きなテレビやらでいくらでも話は広げられるでしょう。何しろ芸人さんですから、接待トークなんてお手のものです。

なのに、「医療機器を海外から輸入している」なんていうほとんどの人が通りすぎてしまう情報にに反応してるところがスゴいのです。

どんなことでも知っておこうという、知的好奇心が強い人特有の振る舞いですね。

 

彼がアメトーク「読書芸人」に選ばれるのも分かる気がします。ファッションではなく、本当に読んだり、知ったりすることで世界観が変わったり、自分の常識が少し変わったりすることを楽しんでいるのでしょう。

 

ドッキリ番組の、ほんの数秒の会話でしたが、彼の知的水準の高さが伺えたエピソードでした。

おそらくですけど、カズレーザーは物凄くコンサルにも向いている人だと思います。

 

→そんなカズレーザーがコンサルに向いてる理由はこちら

次の登場も楽しみですね!

映画「ナイトクローラー」感想~意識高い系の行き着く先は。

意識高い人を嘲笑うかのような映画です。

この映画の主人公は、分かりやすいほどのサイコパスです。

「仕事は責任を持って遂行すべき」
「ライバルは排除すべき」
「会社は利益を追求し、つねに規模拡大を志向すべき」…
言ってることの一つ一つは、さほど変なことを言ってないんですね。

行動原理は間違ってないのに、その結果は鬼畜の所業になってしまっている。

主人公は努力家で、「自分はこれらをビジネス・セミナーで学んだ」と力説します。
いわば、「意識高い人」です。

でも意識高い行動を積み重ねると、そこにはライバルの事故死体や不法侵入や、事実の捏造、窃盗、セクハラが積み重なっていく。
面白い逆接だな、と思います。

まるで、今も自己啓発だのに必死になる我々の行き着く先がこうだと言われているような、そこはかとない不気味さがあります。

世の中のビジネスマンは、主人公の成り上がりストーリーに多少は共感するはずです。
そこには、結果への飽くなき努力と追求、そして分かりやすい成功が描かれているから。
そして共感すると同時に、居心地の悪さを感じるでしょう。
そこには他人を省みずに成功を求めることのグロテスクな結果が横たわっているからです。自分もどこかで、無自覚にこんなことをしでかしているのでは?と思わされるからです。

この矛盾をうっすらと感じるからこそ、この映画を観る働き手は、主人公をクズだとバカにすることも、尊敬することも出来ない宙吊りを味わいます。

 

極めて現代的な主人公設定と言えるでしょう。
島耕作なんか読んでるよりも、よほど今のサラリーマン、フリーランスの生きづらさと居心地の悪さ、そして自らの意思で状況を打開するサバイバルの面白さを描いていると思います。

意識高い自分を笑い飛ばせる、ビジネスパーソン映画です。
コンサルみたいなプロフェッショナル職の人や、フリーランスで生き抜こうとしてる人には必ず刺さる何かがあるはずです!

 

ナイトクローラー(字幕版)

ナイトクローラー(字幕版)

 

 ↑私はAmazonビデオで仕事の合間にサクッと見ました!

 

(おまけ)
そして画面全体を支配する、アメリカの美しい夜の描写だけでも見る価値ありです。


『ナイトクローラー』特別映像


このオープニング観た瞬間に、「これは絶対に面白いヤツ!」という予感があり、まさにその通りでした。

漫画「そせじ」(山野一)感想 ~泣けた!半額焼きそばに子供は親の愛を見る

漫画家山野一の、いわゆる子育てコミックです。伝説の漫画「四丁目の夕日」で見せた凄惨・残虐な描写はなりをひそめており、
昼間から酒を飲む父(でも面倒見はいい)と、素直な双子のおりなす、ハートウォーミングな家族の点景が描かれます。

 

そせじ(1)

そせじ(1)

 

 

そんななか、ある小さなエピソードが目を引きました。起こったことは単純です。

・父(作者)がお祭りで売れ残りの焼きそばを二つ買うと、双子は多いに喜ぶ
・だがそこに双子の大事な親友がいたため、父は焼きそばの一つをその友達にあげてしまう。
・すると双子のうち妹が不機嫌になり、やがて泣き出してしまう。
・つい先程も、貴重なおやつをこの友達に分けたばかりで、そのときは何も言わなかった妹が、焼きそばを失ったことでは多いに泣いている

 

起こったことはただこれだけです。
おやつは分けても平気だけど、焼きそばを友達にあげてしまったことが、妹にはなぜそんなにショックだったのか。

妹は泣きながらその気持ちを父に語るのです。

妹「たべものは お友だちにわけてあげなくちゃいけないってしってるよ
だからさっきニクピック(※ジュースのこと)をあげてもおこらなかったでしょ

ねずみこく(※ディズニーランドのこと。友達に自慢されたばかり)にいけなくてもいいんだよ
おとーちゃん、いつもなんも買ってくれないでしょ」
父「うん」
妹「でもあのやきそばはおとーちゃんがかってくれたんだよね」
父「半額の半額の半額だったからね」
妹「だからハナちゃんとミミちゃんだけで食べたかったんだよう」
父「そーかー」
妹「だってふたごだけがおとーちゃんのこどもだから」

…焼きそばは滅多にものを買ってくれない父親が自分のために買ってくれたものだった。だから、それは大事な友達にもあげたくなかった、というわけですね。
大人からすれば、「なんだ、そんなことか」となってしまいそうな、ささやかな理由です。

だけど子供にとっては、親が自分のために何かをしてくれたことがこんなにも大きなことなんですね。
子供はいつか、親の愛なんてあって当たり前のように振る舞います。
でも小さい頃は、半額の焼きそばでもそれが嬉しくて、誰にも渡したくない時がある。

 

公園の片隅でかわされた、本当に些細な会話なのに、正直ちょっと泣けてしまいました。

…でもこの妹の話を聞いていた双子の姉は、あっさりと「なに言ってるのかぜんぜんわからない」と一蹴します笑


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引用元「そせじ」第二巻より

このあたりの子供同士の感覚のズレもリアルだなーと。

これ以外にも、読んでて楽しくなるエピソードがたくさんあるので、かなりオススメです。とにかく双子がかわいいです。

 

そせじ(1)

そせじ(1)

 

 今のところ二巻まででてます。

 

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

 

↑伝説的なカルト?漫画。

三丁目の夕日を思わせるタイトルながら、一人の青年の凄惨な生活を描写します。

個人的にはグッドエンドだと思っています。小さな幸福の予感だけを残して終わる、綺麗なラストでした。